すると、後ろから低い低い声がする。


「おい。何してんだ、お前ら」


きゅうっとたろちゃんのセーターの裾を掴んでいた私。
そのまま何時のように、手を繋いで帰ろうとすると、物凄く苛々した敬太がこっちを睨みつけながらつかつかと近寄ってきて、がしっと私の腕を掴んでくる。


「いたっ」


あまりの痛みに、顔を歪ませる。
すると、いつもは温厚なたろちゃんが、敬太に対して苛立ちを顕にした。


「おい、乱暴はやめろよ。美依痛がってるだろ!大体、お前はもう美依の彼氏でもなんでもないんだから、放っておいてくれないか。迷惑だ」


その怒り方が、尋常じゃなくて、私は思わずたろちゃんの顔を見る。
でも、そんな私を察してか、たろちゃんは「大丈夫だよ」と返してくれる。


「なんだよ?それ、じゃあお前はなんなんだよ?お前こそ他人だろ?人の間に割って入ってんじゃねぇよ!」

「美依のこと何も分かってないくせに。そんな奴にとやかく言われる筋合いはない。ほら、行こう?美依」

「う、うん」


一瞬、敬太の力が緩んだことをいいことに、私はたろちゃんの手を掴んでその場を立ち去った。