敬太は、別に…。
私なんかじゃなくてもいいんだから。
…そう、私じゃなくても…。

気付いたら、ぼろぼろと涙を溢して、立ち尽くす私
すると、不意に名前を呼ばれた。


「あれ…？美依？」


それは、幼稚園からの幼馴染の「たろちゃん」こと佐々木孝太郎くんだった。


「…っ。たろちゃ…っ」

「…まぁた、敬太かよ。…あーぁ。泣くな泣くな、美依。折角の可愛い顔が台無しだぞ？」


たろちゃんは、お兄ちゃんみたいな存在で、いつもいつも私の愚痴を嫌な顔一つせずに聞いてくれて、凄く凄く温かい人だ。


色んな意味で、敬太とは、真逆の、人。


「たろちゃん…今ね、今…」

「うん…分かってる。言いたいこと、言えたんだろ？」

「…ん…。もう、疲れた。敬太と一緒にいるの、疲れたよぅ…っ」


今にも大声で泣きそうな私に頭をぽんぽんと撫でて、たろちゃんはこう言ってくれる。


「よしよし。じゃあ、今日は四ツ橋のあんみつおごってやるから、もう帰ろう？」

「ん…ありがと…たろちゃん、……クリームあんみつでもいい？」

「ははっ！いいよ。美依の好きなものおごってやる」


そんなことを言ってる内に、あれだけ溢れていた涙も落ち着いて、自然と笑顔が出てきた。