【短】あなたが見えない

そんなことを思っていたなんて。
本当に、私は一体この二年の間、敬太の何処を見ていたんだろう。


「でも、敬太だって、美人な取り巻きがいっぱいいたじゃない…」

「あれは、見栄というか…なんというか…お前に嫉妬して欲しかったっていうか…」

「……ふふ…子供みたい」

「…どっちが子供なんだか…な」

「そうだね」


かちゃんっ


くすくすと笑いながら目の前に移動してきた敬太の胸の中に、私は思い切りダイブして大きな声で「好き!」と言った。

見えない苦しさも不安も、恋人同士ならお互いにあって…それは当たり前のことなんだって、今なら分かる。


あなたがみえないなんて、もう言わないから…どうか、私のことが分からなくならないようにこれからも傍にいて。

あなたとずっといたいから…。


Fin.