3度目に、君を好きになったとき


蓮先輩の案内で、ピアノのコンサート会場へ無事に着いた。

会場は木の香りがする広いホールだった。
すでに大勢の人が集まっている。



何気なく辺りを見回したとき。誰かに睨まれた気がして、急いで横を向く。

けれど特別、不審な人物は見当たらない。

気のせいかと思い、そのままホールへ入場した。


渡されたパンフレットを片手に、指定席へ着く。

席はちょうど中央辺り。私は左隣に座る蓮先輩へ話しかけた。


「実は、母が佐伯(さえき)(りょう)のファンで」

「え、そうなの?」

「だから、前から私も知っていたんです」

「じゃあ、結衣のお母さんも誘えばよかったね」

「いえっ、私の母のことはお構いなく」


慌てて手を振ると、蓮先輩は薄く笑った。


「結衣のお母さんか……結衣と同じで優しい人なんだろうな」

「え……あんまり似ているって言われないですよ」

「そう?」


先輩は私の過去を知らないから、そんな風に褒めてくれるだけで。

全てを知ったら、手のひらを返すみたいに冷たく私を見るんだろうな。

いや、視界にすら入れてくれないかもしれない。