エメラルドの祝福~願えよ、さらば叶えられん~


「そうよね。あなただってヒューゴが好きだったのよね。おあいにくさま。彼はもう私に夢中よ。もし戻ったとしたら、今度は嫌われてしまうわ。地味でおとなしいあなたでは、彼の相手にふさわしくないもの」

見慣れた自分の顔が、別人のようにも思える。
丁寧に施された化粧。はきはきと動く口。ベリルがベリルであったときより、綺麗だ。
だけどベリルは、不愉快だった。この顔は好きではない。

「ベリル。もう観念して。私たちの顔が戻ることはないわ。私たちは、互いになって人生を生きなきゃならないのよ。そしてヒューゴは絶対にあなたを好きにはならない。……いいじゃない。ローガン王子は相当の美男子なんでしょう? そんなお方に愛されて、幸せよ、あなたは」

「ひどいわ。シンディ」

「そんな豪華な首飾りをいただけるほど、愛されているのでしょう? 十分じゃない。話はそれだけ? だったら戻るわ」

ツンをそっぽを向いて、シンディは出ていく。
残されたベリルは、途方もなく寂しく、心細い気持ちになった。

もう姉妹が昔のように親しくできる日は来ないのかもしれない。
ベリルは寂しさと悔しさとないまぜになった気持ちをどう処理していいかわからなかった。