エメラルドの祝福~願えよ、さらば叶えられん~


「やっぱりこの色のドレスのほうが素敵よね。ベリル、あなたがお嫁に行ったら、このドレス、全部私がもらってもいいわよね。それにこのブレスレットもあなたの好みじゃないでしょう? もらっていくわね。お父様になにか言われたら、あなたが自分から私に渡したと言ってね」

ベリルの姿とは言え、中身がシンディだとどこか華やかに見える。
両親の話では、シンディはかいがいしく伯爵邸に通い、一緒に夜会に出たりもしているらしい。
『最近は、ベリルもすっかり社交的になって』と言われて、複雑な気持ちがしたものだ。
結婚の手続きも、親同士の間で着実に進んでいるらしい。

「シンディ姉さま。少しは元に戻ることを考えてくれてるの?」

「考えてないわ。だって無理だもの」

「できたんだから無理なんてことないわ。どうにかすれば戻れるはずでしょう?」

思わず語気を荒くしてしまったベリルに、シンディは驚く。

「……な、なによ。あなたがそんな大きな声出すなんて珍しい。うまいこと王太子様から選ばれて、自信持っちゃった? でもね、それって私の容姿のおかげだからね?」

「なっ、ひどいわ。私は別に王太子妃になりたかったわけじゃないのに。今だって戻れるなら戻りたいわ。そうしたらヒューゴ様の妻になれるんですもの!」