エメラルドの祝福~願えよ、さらば叶えられん~



 早朝から目覚めたシンディは、早々に着替えを済ませた。
窓を開けると冷たい風が入ってくる。数分風を浴び、部屋が冷え切る前に閉めた。これだけでも頭はずいぶんすっきりした。

今日は父親と話さなければならない。シンディは気が重かった。
その時の中身はベリルではあったが、王太子の婚約者がシンディに決まったときの喜びようといったら、見ているこっちが恥ずかしくなるほどだったのだ。それが破談になったと聞けば怒るだろう。常から父親とはケンカばかりだが、一方的に責められることを思うと気が重い。

「まあ、婚約破棄したところで、すぐベリルと婚約するんだから、そこまではぐちぐち言われないかしら」

物思いにふけっていると、扉をノックされた。ここは屋敷じゃないので侍女がついているわけではない。仕方なく、シンディは入口に寄った。

「どなた?」

「コネリー・ビアズです。シンディ様、お目覚めですか?」

「……コネリー様? 今開けますわ」

ローガンの副官だという彼がどうして?
不思議に思いながら、シンディは扉を開けた。すると、コネリーが髪をなでつけ、きっちりした正装でやって来た。まるで、これから式典でもあるかのようだ。