エメラルドの祝福~願えよ、さらば叶えられん~

ローガンが言っていた、クルセイド王朝始祖の話だ。魔法を操る男が現れ、原石を一瞬で美しい宝玉に変えたと同時に、灰になって崩れ落ちたという不思議な話。

「エメラルドの中にいれば、俺の愛するエメラルドの尾がいつでも見れる。この宝玉の中では彼女は生きているように泳げるんだ。だから俺は終わりの見えないこの生が続く限り、ここにいようと思った。だけどある日、あろうことか宝玉がふたつに割られたんだ。この宝玉には、俺の魔法の効果がそのまま受け継がれていて、交換の魔法が使える。だがふたつに割られたことで、魔法は暴走し始めた。片方……ネックレスにされた方は、身に着けているほうの願いを優先的に叶える。指輪にされた方は、身に着けた人間が対峙した相手の願いを優先して叶えてしまうんだ」

シンディとベリルの顔が入れ替わったのは、シンディの願う力が強かったから。
ローガンとダレンの顔が入れ替わったのは、ダレンの願いを吸い取ったから。
ベリルとフェンレイの力がほんの少し入れ替わったのは、ベリルの願いを受けたから。

「ふたつがそばにあると安定するんだ。あの時、君の王子様も指輪を持っていたんだよ。だから、君の願いと王子様の願いで、元に戻ることができた。ありがとう」

「お礼なんてそんな……」

「俺は、自分の願いだけを叶えることはできないんだ。誰かが願ってくれなければ。だから君たちがいてくれて、本当に助かった」