「素直にベリルを気に入ったと言っていただければいいのですわ。父にしてみれば、相手がベリルになっただけで、王太子妃を侯爵家から出せることには変わりありませんもの。それに、私にお妃は無理ですわ。お妃教育を一日だけ体験しましたが、気が狂いそうでしたもの」
茶目っ気たっぷりに笑って、シンディはベリルの手を握った。
「……私、ずっとあなたを、おとなしくて冴えない私がいないとダメな妹だと思っていたの。でもそれは間違いね。あなたは私よりずっと強くて、優しい。あなたはローガン様を支える妃になれると思う。本当よ?」
「姉さま……」
ベリルは感激のあまりシンディに抱きついた。
「ちょっと、子供みたいなことしないで」
冷たく言われても、ベリルは姉から離れたくなかった。やがて「今まで、ごめんね」とベリルにしか聞こえないくらい小さな声がする。
「私こそ、姉さまをねたんでばかりいたの、ごめんなさい」
互いに謝罪を交わし合い、姉妹はようやく間にあった壁のようなものが無くなったことを実感したのだ。



