エメラルドの祝福~願えよ、さらば叶えられん~


全員が一度顔を見合わせ、頷きあう。そしてベリルは、今日一番に思っていた疑問を口にした。

「ローガン様はどうして私があそこに連れさられたと分かったんですか?」

ローガンは彼女の無事を喜ぶように目を細める。

「バートがシンディ殿を送ってブラッドリー侯爵家に戻ると、ヒューゴがベリル殿を連れ出したと言われたんだ。そのときのシンディ殿との会話で、エメラルドのネックレスがヒューゴからもらったものだと確定した。バートはその時点で、ヒューゴが怪しいと思ったんだろう。馬車は御者に任せ、すぐに俺のもとに報告に来てくれた。俺とコネリーはすぐに、ダレンを締め上げ、やつらのアジトの場所を聞きだした」

「ローガン様があんなに興奮してるのも初めて見ましたよ。押さえるの、大変でした。というか実際押さえられなかったんです。ダレンの顔をしている今なら、忍び込めるからひとりで行くと言い張られて。反対したのに聞いてもらえなかったんですよ。さすがに王子になにかあったら変わりがいないんですから、バートに隠れて様子を窺うように指示しました。そして私は、シンディ殿のほうが心配だったのでアシュリー邸に向かいました」

続けるのはコネリーだ。バートも無言でうんうんと頷いている。どうやらローガンを押さえるのに、相当苦労したようだ。

「まあ、ヒューゴ殿については数日かけて取り調べをするが、今回の事件の顛末はこんなところだな。なんにせよ、あの魔石が入れ替えていたすべてがもとに戻ったようでよかった」

「そうですね」

ベリルも、あの一瞬増えたように感じた腕の力がすっかり無くなっていた。
確認するように二の腕をさすっていると、ローガンが真顔になった。