「あなたは知っていたの?」

「途中から。私とシンディ姉さまが入れ替わっているのも、その時にお話ししてあるの」

「では今のローガン様は……」

「今のローガン様は本物のローガン様よ。私を助けに来てくれたとき、私が持っていたエメラルドとローガン様の持っていたエメラルドがひとつになって、魔法が全て解けたの」

どうして魔法が解けたのか。それはベリルにも分からない。

「そう。ダレンの顔になってしまった俺は、城下町に下り、身を潜めていた。その時にベリルとシンディ殿に出会ったんだ。君は覚えてないかもしれないが」

ローガンはシンディに向かって、苦笑してみせる。

「え? ……まさか、あの時の浮浪者?」

「そう。ベリルにぶつかってしまったあの時の汚い男だよ」

「そ……も、申し訳ございませんでした」

あの時の態度を思い出し、シンディは頭を垂れる。

「いいよ。頭を上げて、シンディ殿。それより、君がエメラルドの宝玉を手に入れた経緯を教えてほしい」

「あの宝玉は、……ヒューゴが主催する賭けポーカーの景品です。たまたま私が勝ち手にしたもので……。ローガン様のお相手を決める夜会に行けと言われて、当時ヒューゴと恋仲だった私は、それが嫌でベリルとの入れ替わりを望んだのです」

そして、結果として、シンディの顔をしたベリルが、ローガンの顔をしたダレンに、婚約者として見初められたのだ。
そしてベリルがローガンとダレンの入れ替わりを知ったのもつかの間、シンディとベリルの入れ替わりがもとに戻る。そして、ベリルがヒューゴにさらわれたという流れだ。