やがて羽振りの良くなったフェンレイに声をかけてきたのがダレンだ。

『お前、いいとこの坊ちゃんと繋がってるんだってな。俺、いい物もってるんだぜ?』

ダレンは、素早さに定評のある盗人だ。彼は盗品をヒューゴに売りつけるためのパイプ役をフェンレイに持ち掛けてきた。
フェンレイは何も考えずに彼らを引き合わせる。
ダレンの盗賊としての腕前を知ったヒューゴは、やがて多くの貴族の情報を持ってくるようになるのだ。

遠回しに、この貴族はいつ出かけて屋敷の中が手薄になる、とか情報を漏らしては、盗んできたダレンから宝石や骨とう品を安く買い取っていた。

そしてこの頃から、フェンレイの家が、彼らのアジト代わりに使われるようになっていく。

「……ヒューゴ殿がどうしてこんなに金策に走っていたのかはわかりませんが」

「あ、それなら私がわかります」

コネリーのつぶやきにベリルが口を挟む。

「ヒューゴ様が言っていました。お姉さまと釣り合うようになるためには、多額の資産を持たなければと思い込んでいたようですわ。家柄はもうどうしようもないのだから……と」

シンディが隣で唇を噛みしめたのに、ベリルは気づいた。
当時ふたりは恋仲だったのだし、思い当たることもあったのかもしれない。

そもそもヒューゴにとって、シンディは高嶺の花だ。
だからヒューゴは身に纏うすべてのものを、侯爵家の令嬢に恥じない程度に装わなければならなかったはずだ。
やがて資金繰りに苦しんだヒューゴが選択したのが、賭けカードを主催して多くのもうけを手に入れることだったのだろう。