馬は、どんどん郊外のほうへと向かっていった。同じ町の中とはいえ、シンディは来たことのない区画だ。
不安になって来るが、コネリーの手綱さばきには迷いはなさそうだ。やがて、うっそうと木々が茂る一角に打ち捨てられたような家があり、コネリーはここで馬を止めた。
「ダレン……あ、ダレンというのはこちらで確保している賊のひとりです。彼の証言によるとアジトとなっていたのはここですね」
そう言うと、コネリーはひらりと馬から降りる。そして、戸惑うシンディへと手を伸ばした。
「受け止めます。手をこちらに」
細身の印象なコネリーだが、意外にも力があった。
飛び降りたシンディの体を抱きとめ、腰を掴んでゆっくり地面へと下ろす。
「あ……ありがとうございます」
「決して私の前に出ないように。行きますよ」
目の前に広がる背中をみていると、なぜか胸が落ち着かない。その一方で、必ず守ってもらえるという確信めいたものも感じる。まだ出会って間もないのに、そんな信頼を抱けることが自分でも不思議だが。
(……私はどうして、あんなにヒューゴに固執していたのかしら)
自分にはないものを持っている彼に、ひどく長い間恋焦がれていた。
これが真実の愛だとずっと思っていた。だけど、それが真実だと語れるほど、自分は愛というものを理解していたのだろうか。



