年の近い姉妹は比べられることが多い。
シンディはベリルの顔でいた間、人々の口さがない振る舞いが、どれだけベリルから自信を奪っていったかを思い知った。加えて、シンディはベリルを見下すことで、自尊心を満たしてさえいたのだ。
それは彼女にとって、どれほどの屈辱だっただろう。

けれど、そんなシンディを、ベリルはなにがあっても見捨てないと言ってくれた。
顔が入れ替わったことで、シンディはベリルの気持ちが想像できるようになった。そして彼女の土の下で根をはるような、見えない努力を思い知ったのだ。
今までのことを許してくれるというなら、彼女を軽んずる人たちに、ベリルは自慢の妹だと声を大きくして言いたい。
姿や見た目が変わっても、変わることのない妹の心を誇らしいと思える。
もうシンディは、二度とベリルを見捨てたり、見放したりしない。

「……いいえ。婚約者だというなら、どうして命をかけてベリルを守ってくださらなかったの? 私のたった一人の妹よ。お願いよ、襲われた場所に案内して、ヒューゴ。ベリルを救い出さなきゃ!」

涙を浮かべながら言ったシンディに、ヒューゴは驚いたように目を見開いた。
彼もまた、シンディがベリルを内心で馬鹿にしていたことを知っているからだろう。

「お願い、早く教えてヒューゴ」

「ま、待てよ。俺の怪我の手当てもしないと……」

この期に及んで怯んだヒューゴに、わずかに残っていた恋情の糸がぷつりと切れた。