「シンディ? どうしてここに」
呻くような声でシンディの名前を呼び、地面に崩れ落ちる。
ハンカチで押さえているが、腕からは血が出ているようだ。
「ヒューゴ! 大丈夫? しっかりして」
シンディは蒼白になって、彼を抱き上げようとした。しかし、シンディの力では上半身を持ち上げるだけで精いっぱいだ。
ドレスが汚れるのも構わず、彼の頭を膝に乗せる。
「シンディ……大変なんだ。賊が突然襲ってきて。ベリルをかばったが、腕を切られてね。ベリルは……賊にさらわれてしまったんだ。……命からがら、逃げてきたんだよ」
「大変だわ。……医師を呼ばなきゃ」
ヒューゴをいたわるように抱きしめたシンディだったが、その脇へコネリーが無言で立ったことに気づいて、ほんの少し冷静さが戻ってきた。
「コネリー様、家人に連絡を……」
「その前に確認したいことが。アシュリー伯爵子息ですね。私はビアス伯爵家のコネリーと申します。怪我をされた場所を拝見します。腕だけですか? 体の痛みは? ……大したことはなさそうですね。この程度の怪我で、女性を見捨てて逃げてきたんですか?」
膝をついたコネリーはヒューゴの腕を思い切り掴む。痛みに顔をゆがめた彼だが、特に傷口が開いたり血がにじんだりという気配はない。本当にベリルを守るために戦ったというならば、もっと全身が傷だらけでもいいはずだ。
ヒューゴは頬を引くつかせ、コネリーではなくシンディに訴える。



