「可能性としてはいくつかあるでしょう。闇市に出回っていたのを買ったか、さもなくば彼自身が盗賊の仲間だったか。しかし、闇市に関しては、その品物が盗まれた翌日から人を忍び込ませてあります。出回った形跡はない。となれば、彼が盗賊の一味だったと考えるのが妥当です。……城に内通者がいるというのは前々から考えていたことです。地下通路を知りえる人物とすれば、禁書庫を自由に閲覧できる立場の人間か、代々繋がる古い家柄で、家人から言い伝えられたかのどちらかでしょう。私たちが出していた参考人名簿の中には、ヒューゴ・アシュリーの名前もありました」

「言っている意味が分からないわ……。それに、ヒューゴは伯爵家の嫡男よ。犯罪に手を出す必要なんて……」

無いはずだ。そう続けようとして、シンディは思い至る。
彼が、頻繁に開催していた賭けカードの賞品。てっきり、オーナーとしての儲けの中から買っているのだと思っていたが、あれが盗品だとしたら……。

黙っているシンディの耳に、馬車の近づく音が聞こえる。
コネリーも振り返ってその方向を見ていると、こちらに近づくにつれ速度を落とし、目の前で止まった。

「きゃっ」

馬車の扉に、血のような色がついている。御者はシンディとコネリーを見つけると、必死の形相で叫んだ。

「助けてくれ!」

呆気に取られていると今度は中からよろよろとヒューゴが出てくる。