「姉さま。そのままの姉さまを、本当に愛してくださる人が絶対にいます。姉さまの気持ちより宝石を望んだヒューゴ様のことなどお忘れになってください」

「そうしてあなたがヒューゴの妻に収まるの?」

「いいえ。私はヒューゴ様との縁談を破談にしてもらうつもりです。お父様に頼んでみます」

「駄目よ、そうしたら伯爵家との縁が切れてしまうわ」

「切れても構わないでしょう? 縁が切れて困るのは、伯爵家だけではありませんか。私は他に好きな人ができました。かすかに残っていたヒューゴ様への気持ちも、お姉さまをこんな目にあわせたと知って、綺麗に無くなりました。私は、この魔石の入手経路を説明していただき、犯罪の可能性があるならそれも追及するつもりです」

「でも。……駄目よ。そんなことをしたらヒューゴが困るわ。ベリル、お願い」

必死ですがってくるシンディは、こうなってもまだ、彼への恋慕にとらわれている。

(私よりずっと純粋な愛だったんだわ。……姉さまの気持ち、ちゃんと届けばよかったのに)

ベリルはシンディの涙を拭った。そして目を見合わせて、一音一音、力を込めて言い聞かせる。

「お姉さま、ヒューゴ様をそこまで愛しているのなら、彼の目を覚まさせるのもあなたの役目です。姉さまの姿のままで、ヒューゴ様にぶつかってみてください」

シンディの瞳に、ほんの少し光がともったのを感じた。こうなれば姉は美しいのだ。目的を持った彼女は、周りを圧倒するほどの勢いでそれを貫く強さがある。