私は1年が経ち 2年が過ぎ
手際のいいおばちゃんになりつつある。
普段は人目のつかないところで
コツコツと仕事をしている。
ーーー素敵なホテルねーーー
ーーー綺麗なホテルねーーー
と言われるのは私たちが
一生懸命頑張ってお掃除をしているからだ。
そんな人達がいなければ成り立たない。
たまにはそういう人達にも
感謝してほしいな・・・なんて
思ってみたりもする。
そう思えるのは心に余裕ができたからだ。
3年目掃除婦として働く傍ら
売店担当のパートさんが体調不良で
退職してしまって
次のパートの人が決まるまでと言う約束で
売店の売り子も手伝ったりもした。
持ち前の明るさを発揮し
売店の総監督から
「こっちに変わってこないか?
君みたいな若くて声の大きい子が
必要だ」と誘いを受けた。
若くてと言うのはいいが
声がデカいと言うのはどうなのだろうか。
「考えてみます」
そう答えたのは掃除の仲間の皆さんが
親切でいい人ばかりだから
自分だけ抜けるのもどうだろうか?と
考えてしまう。
そんな矢先のことだった。
久しぶりの母からの電話
仕事中だったためすぐには
取ることが出来なかった。
着信歴7件
尋常じゃないなと感じた私はすぐにかけた。
「萌香が出ないから
ホテルにかけようと思ったんだけどね
迷惑をかけると思ってね」
から始まった。
うん ホテルに掛けられてたら
「通訳の小島を呼んでください」
と言ってると思うから
「え?通訳にそんな人いませんよ?」
から始まって今の生活がバレてだろう。
「何事なの?」
「お父さんがトラックと正面衝突して
事故ったのよ」
「はぁ?」
それから母の小言が始まった。
最終的には帰ってこない?
だった。



