着の身着のまま私は北海道へと
旅立った。
2月の終わり
まだまだ寒い
街も寒いが私の心は
もっともっと寒い。
元カレが会社で
セクハラ紛いなことをして
島流しにあったと聞いた時
笑っていたけど
まさか自分もそうなるとは
予想もしてなかった。
元カレとは違う!
私は悪くない!
絶対悪くない!
すぐにやめて帰ってやる!
そう意気込んでメモ書きにある
交通手段を確認。
新千歳空港からシャトルバスね
乗り継ぎなどご丁寧に記されている。
社長の最後の優しさなのか
そーだよね
餞別まで5万円くれたものね。
退職金と途中までの
給料は後に振り込むとのこと。
登別温泉 ホテルフラワー
(架空のホテル名です)
そこが私の仕事場らしい
どんな仕事をするのか
そこには記されていない。
正面玄関ロビーの自動ドアが開いた。
『いらっしゃいませ
どうぞこちらへ
お荷物をお持ちしましょう』
従業員の方が
私を観光客と間違えているのか
キャリーバッグを持とうとする。
「大丈夫です!
ありがとうございます」
「ご遠慮なさらずに
では あちらで受付をお済ませ下さい」
ほらほら!違うってぇ。。。
カウンターに着くと
「いらっしゃいませ
ご予約のお客様ですね
ご宿泊の手続きを致しますので
こちらの用紙にお書きください」
だから。。。違うんだって。。。
「あの・・・わたし
東京から参りました
小島萌香と申します」
「東京?小島さま?
少々お待ちくださいませ」
宿泊名簿を確認してるようで
もちろんそこにはわたしの名前はない。
「少々お待ちくださいませ」
周りの受付の人たちと
コソコソと話をしている。
「あのぉ 実は
今日からここで
お世話になる予定の小島です
菅波社長さまを訪ねて参りました」
「あぁ・・・」
やっと理解できたようだ。



