「ただいまー」


と玄関で叫ぶが
「おかえりー」と家の中から
返事が聞こえてくる。


彼氏を連れて帰ると伝えたのに
嘘だと思っているのか
お出迎えもないうちの親。


「失礼な奴らめ!
驚くなよぉ〜
葵くん 上がって上がって」


「お邪魔します」
少し大きめに言った葵くん
その声が聞こえたのか
「えっ!!!」と反応した母。


「今男の人の声が聞こえたけど?」
と話ながら出てきて 
持っていたリモコンを落し
電池がバラバラっと散らかった。


「何してんのぉー」
とリモコンを取ってると葵くんも
電池を拾っていた。


「彼氏って彼氏?」


「言ったでしょ
彼を連れて行くって」


「そうなのね!
どうぞどうぞ
おとうさーん大変よぉ〜」
と先々リビングへ行く母。


その時点で葵くんだと気づいていない
忘れてるのか?
数ヶ月前のことなのに!


「父さんただいま」


「お帰り」と言う父は
慌てたのがよくわかる。


食卓椅子に座って
新聞を読んでるフリをしてるが
その新聞は逆さま。


「父さん!新聞置いて
こっちきて 
はい!母さんも来て来て!
葵くんはどーぞ座って」


ソファーに私も座った。


「萌香が彼氏を連れてくるなんて
何年ぶりのことかしらね」
手をタオルで拭きながら父と
私たちの前に座った。


そこでやっと葵くんを見たのか
「あれ?どこかで会ったかな?」
と言った父。


「はい ご無沙汰しております」


「あっ!!!君は!!!
高橋先生!!!」


「そうです」


「うん?なんで?
うちの娘と?」


「まぁ話せば長いのよ」


「おいおいあれだけ
個人情報流出するな!とか
ワシには言っておいて
男前だから目をつけてたんだなぁ
どんな手を使ったんだ?
こんな男前さんだから
相当な手を使ったんだろ」


失礼なことばかり言う父。