応接間の扉の前
この中には社長がいる
そう思うだけで 身体が少し硬くなる。
「じいちゃんこんばんは」
「おう!よく来たな」と
葵くんを出迎えた社長。
そして社長は私に目を向けた。
「え?」
一言目にはこの言葉。
「ご無沙汰しております」
深々と頭を下げた私。
「何しに来た!帰りなさい」
と言われるのは覚悟してる。
「葵が付き合ってる人を紹介したいと
連絡してきたんだが?
小山さんが葵の彼女なのか?」
「あら?あなたこの方を知ってるの?」
おばあさまが社長に聞いた。
「まぁ。。。ちょっとな
あっ!お茶を持ってきてくれ」
おばあちゃんにお茶を持って来いと
指図をした。
それはきっとおばあさまには
聞かれたくないからだ。
「お茶は後でいいから
おばあちゃんも一緒に話を聞いて」
とその場に残るように言った。
葵くんも私と同じで
社長はおばあさまに聞かれたくないんだと
思ったようだ。
「3年前におじいちゃんが
オレたちを引き裂いたんだ」
「え?」とおばあさまと同時に
社長も「あっ。。。」と発した。
そして全てをおばあさまに話した。
「あなた!!!どうして?
葵に聞いて確認しなかったの?」
「いや。。。葵は傷ついてるから
そっとしておいてやったほうがいいと」
「どうしてそんなひどいことしたの!
この娘さんが可哀想だと思わないの?
他所様の大切な娘さんを
そんな遠くに飛ばして
本当に情けないったらありゃしない」
「お前だって あのとき聞いたら
葵が可哀想だと言うはずだよ?」
当時あの子たちが社長に
どんな言い方をしたのかわからないが
いっぱい嘘も並べられたのだろう
大企業の社長があれほど怒るのだから。



