「どこ行くの?」
聞いても行き先には無視をする葵くん。
そして車は閑静な住宅街へと入り
一軒の豪邸の前で止まった。
「ここはどこ?」
「降りて」
「だから!
どこだって聞いてる・・・の・・・」
私は言葉を失った。
それは立派な門構えの表札を見たからだ。
【遠藤 隆義】
それは社長の名前だから。
「どうして?何がしたいの?」
「萌香のネックは じいさんだろ?」
と葵くんは私に聞く。
そうだけど 葵くんにとっては
大切なおじいちゃんなのに
「そうよ!」なんて言えるはずもない。
答えないのが一番だと無視をした。
「即答できなかったのは
じいさんが居るからなんだろ?」
少しだけ言葉を変えて
また質問してくる。
「そんなことないけど・・・
社長にどんな顔して会えばいいか」
そして 顔を見るのが怖い。
「大丈夫!
大丈夫だから降りよう」
と 車を降りて助手席側に回り
ドアを開けた。
インターホンを鳴らすと
モニターで葵くんだ確認できたのか
門が開いた。
玄関まで石畳みを歩くが私は
緊張感マックス。
玄関を開けると上品なおばあさまが
待っていた。
「いらっしゃい」
と 優しく声をかけられ
私は「こんばんは」と頭を下げた。
「葵が彼女を連れてくるって言うから
朝から心待ちにしてたのよ
どうぞ!上がって」
楽しみに待っていらっしゃったのに
こんな私でごめんなさい。。。
「こら!緊張すんなって!」
と 葵くんに背中をパシッと叩かれた。
「痛っ!!!」
あんたね!!!と言いたいのを我慢。
そして『もうどうにでもなれ!
どうにかなるさ』と気合を入れた。



