“屯所”は数分で着いてしまった。
「ここが新選組屯所です」
「へぇ〜」
そこは高い木材の塀で囲まれた、割と広めの屋敷のようなものだった。
「ほら、ぼーっとしてないで。早く早く」
「すみません、」
中へ入ると、ひとつの部屋の前で立ち止まった。
「土方さぁん」
「なんだ」
ドスの効いた返事が聞こえると、沖田さんは私に指を指しながら襖を開けた。
「この人。町で浪士に絡まれている女の人を助けるために浪士を峰打ちで気絶させたんです。もうほんっと動きが早すぎたので連れて来ちゃいました!!どうですか?怪しくないですか?」
「こうですよ?こうです!」なんて彼は続けてさっきの私の真似をしていた。
土方さんと呼ばれる彼は、男前とも言える美男な顔立ち。そんな彼は、眉間に似合わないシワを寄せながら私を凝視した。
「お前、間者か」
間者?!
「違います!ただの旅人です。さっき京都に着いたばかりなんです」