そうして再び町を歩いていると、叫び声が聞こえた方に人だかりを見つけた。



人だかりを掻き分けて前へ出ると、そこには刀を持った浪士と視線のさきには尻餅をついた女性がいた。



状況が掴めず2人の様子を伺っていると、浪士が女性の頬を殴った。



居ても立っても居られず、私は女性を庇うように前へ躍り出た。



「やめて!!」



「なんだ貴様は!!」



「何してるんですか?!殴るなんて」



「うるせぇ!!こいつが俺にぶつかったんだ!だからちーとばかし銭を貰うんだよ」



「お金なんて持ってません…!!」



そう叫ぶ女性の顔は涙でぐしゃぐしゃだった。



「そんな事?」



「……なんだと?」



「あなたにぶつかっただけで金を払えと?それは酷じゃないですか?ぶつかるのはお互いの不注意であって、彼女だけが悪いというわけではないでしょう」



女性に向き直って、「謝りましたか?」と聞くと、激しく頭を上下に振った。それを確認すると、再び浪士に向き直り話を続けた。



「ですって。彼女も謝ったんですから許してあげてください」