「何言ってるの?おかしいよ、君」



「そうです、私はおかしいんですよ。



私は別に信じてもらいたくて言ってるわけじゃないです」



「なんで……」



彼は悲しそうに呟いた。



「なんでそんなにすぐ諦めちゃうの…?」



「私は何を願っても叶わないって事を知ってるから。希望や夢、誰かに期待した分辛い思いをするって事を理解してるからです。



こんな人生……



こんな思いをするくらいなら私なんか生まれて来なければよかった」



顔を上げると、目の前には呆然と立ちすくむ沖田さんがいた。



「……なんでもないです。今のは忘れてください」



「なんでもなくない。忘れられるわけないでしょ」



「じゃあ、気にしないでください」



「…………」



暫く重い沈黙が続いたあと、沖田さんは言った。



「生まれて来なければよかった人間なんて、この世にいないよ。もちろん、君も。」



そんなの綺麗事。何も知らないからそんなことが言えるんだよ。