「旅の方々、ようこそ! 私はコナヒキーと申しまして、小麦の卸問屋を営んでおります。店の者や小麦農家も頻繁に出入りして騒がしいと思いますが、できる限りのもてなしをさせてもらいます。何日でもゆっくり滞在してください」


そのぽっこりとお腹の出た体型に違わず、コナヒキーは中身も太っ腹なようである。

それくらい屁でもないというほどの財力があるのだろう。

これは宿屋に泊まるより、ずっと美味しいものが食べられそうだと、ラナは単純に喜んでいた。


それから三時間ほどが経ち、空に薄っすらとオレンジ色の明るさが残された頃、ラナはベッドに寝転がって幸せな満腹感に浸っていた。

ここは屋敷の二階にあるふたり用の客室で、隣のベッドにはオルガが腰掛けている。

カイザーたち男性三人はそれぞれひとり部屋をあてがわれ、そこでくつろいでいると思われた。


「美味しかったー! 王都では見たことのない料理がいっぱいで、旅の醍醐味を味わった気がするよ」


ラナたちは、コナヒキー夫妻と娘のジュリエッタ、十歳の息子とテーブルを囲んで、つい先ほどまで晩餐を楽しんでいた。

コナヒキー一家は皆、親切で朗らかな人柄である。

とある貴族の屋敷に家族で雇われにいく道中である、という嘘をつかねばならないことが心苦しくなるほど、ラナたちの旅の話を楽しそうに聞いてくれた。