すると、小洒落た雑貨屋から、買い物袋を両腕に抱えた若い町娘が出てきて、「旅の方、なにかお困りでしょうか?」と親切にも声をかけてくれた。


彼女は、十七歳くらいだろうか。

薄茶の長い髪をひとつに束ねてシルクのリボンで飾り、裾にフリルの付いた可愛らしいピンク色のワンピースを身に纏っている。

その身なりから、町人の中でも裕福な家の娘ではないかと推測された。


宿屋が満室で宿泊先が見つからないという事情をラナが話せば、彼女はニッコリと笑ってありがたい言葉をかけてくれる。


「それでしたら、我が家にお泊りください」

「え、いいの? 嬉しいけど、親に聞いてからの方がいいんじゃない?」と心配したラナに、彼女は「大丈夫です」とキッパリと言い切る。


「父は自分から旅人に声をかけて、家に招く人なんです。見知らぬ町の話を聞くのが楽しいのだと思います。ご遠慮なく、どうぞお泊りください」


それを聞いてラナは喜び、他の四人もホッとしたように微笑んで、町娘の申し出に頷いていた。