* * *
その翌日。
伯爵邸に宿泊した王女一行は、伯爵と町の民に盛大に見送られて早朝に出発し、次の貴族領へと新たな旅路を歩いていた。
今日も澄み渡る青空の下、雑草だらけの田舎道を進みながら、ラナとカイザーは元気に喧嘩をしている。
「ベーコンの恨み、一生忘れないからね」とラナが文句を言ったのは、今朝の食事に関してのようだ。
最後に食べようと楽しみに取っておいた厚切りベーコンを、隣の席に座っていたカイザーが「腹一杯なのか?残したらもったいないだろ」と言ってサッと掠め取り、止める間もなく口に入れてしまった……という事情があるようだ。
ラナの隣をのんびりと歩くカイザーは、「ベーコンごときでムキになるな。意地汚い王女だな」と鼻で笑ってからかう。
すると「王城だったらお代わり自由だけど、他人の家ではそうはいかないよ。旅の間のタンパク源は貴重なの!」とラナはただちに言い返し、ぴょんと飛び上がると、カイザーのツンツンとした髪を潰すように平手で頭を叩いた。
「いてっ、こいつは……俺は怒ったぞ。デコピンしてやる」
「やったら倍返しにするよ」
ギャーギャーと争ううるさいふたりの三歩ほど離れた後ろには、イワノフたち三人が横並びに歩いている。
その翌日。
伯爵邸に宿泊した王女一行は、伯爵と町の民に盛大に見送られて早朝に出発し、次の貴族領へと新たな旅路を歩いていた。
今日も澄み渡る青空の下、雑草だらけの田舎道を進みながら、ラナとカイザーは元気に喧嘩をしている。
「ベーコンの恨み、一生忘れないからね」とラナが文句を言ったのは、今朝の食事に関してのようだ。
最後に食べようと楽しみに取っておいた厚切りベーコンを、隣の席に座っていたカイザーが「腹一杯なのか?残したらもったいないだろ」と言ってサッと掠め取り、止める間もなく口に入れてしまった……という事情があるようだ。
ラナの隣をのんびりと歩くカイザーは、「ベーコンごときでムキになるな。意地汚い王女だな」と鼻で笑ってからかう。
すると「王城だったらお代わり自由だけど、他人の家ではそうはいかないよ。旅の間のタンパク源は貴重なの!」とラナはただちに言い返し、ぴょんと飛び上がると、カイザーのツンツンとした髪を潰すように平手で頭を叩いた。
「いてっ、こいつは……俺は怒ったぞ。デコピンしてやる」
「やったら倍返しにするよ」
ギャーギャーと争ううるさいふたりの三歩ほど離れた後ろには、イワノフたち三人が横並びに歩いている。


