懲らしめて差し上げますっ!~じゃじゃ馬王女の下克上日記~

その顔色は青を通り越して真っ白で、なにをするのかと非難の言葉も出せず、魚のように口をパクパクさせている。


剣を肩に担ぐようにのせたラナは、呆れ顔で振り向くと、自分の倍以上も年上の伯爵家当主に向けて、「愚か者が」と直接的に馬鹿にしてしまった。


「これも贋作よ。オルガに聞かなくてもわかる。本物はお父様が所有しているもの。はっきり言わせてもらうと、あなたの鑑識眼は素人並みよ。収集家を気取るのはやめなさい。また騙されるから」


それからラナは閉められていた西側のカーテンを開けにいく。

小高い丘の上に建つ邸宅の三階にいるため、町とその向こうの山々がよく見渡せた。

山間に見える空が夕日に燃え、橙に染められる町は、ボロくても美しい。


両開きの窓まで全開にして、吹き込む風に気持ちよさそうに目を細めたラナは、剣先で町を指し、未だ呆けている伯爵の方に振り向いて言った。


「見なさい、この景色を。夕焼けに美しく輝いているわ。どんな名画でも、本物の景色には敵わないのではないかしら?この価値ある領地とそこに生きる民を守ることが、あなたの使命であるはずよ。今後は肝に銘じなさい」


醸し出る凛としたラナの雰囲気は、紛うことなき王家の血筋であると感じさせた。

強気な碧眼で見据えられ、厳しく諭された伯爵は、やっと自分の過ちに気づいたような顔をする。

後悔しているように力なくうなだれると、絨毯に両手をついて平伏した。


「王女殿下のご諫言、このレベンツキー、生涯忘れず、今後は領民の幸せのために邁進することをお誓い致します……」