懲らしめて差し上げますっ!~じゃじゃ馬王女の下克上日記~

それから伯爵が気を取り直したような顔をして、「奥の部屋に私の宝を保管してあります。遠路はるばるお越しいただいたのですから、ご覧に入れましょう」と強気に言い、五人を伴って歩き出す。

廊下をまっすぐに進んで突き当たりの扉の鍵を開けると、ラナたちを中へ通した。


テーブルなどの調度類がなにもない天井の高い部屋は、全ての窓に分厚いカーテンが閉められて薄暗い。

おそらく大事な絵画を日焼けさせないためであろう。

しかしこれでは見えないので、伯爵が中庭に面しているカーテンだけを開けた。


明るくなった室内には、壁の一面を埋めるほどに巨大な宗教画が、金の額縁に入れられて飾られていた。

ラナの背丈の二倍ほどの高さで、横幅は馬二頭分もあろうかという大きさである。


その絵の前に立ち、両手を後ろ手に組んでフフンと笑った伯爵は、自慢げに説明する。


「これはかの有名な『サトミナルド・コウタロヴィンチ作、ゴローコーの最後の晩餐』ですぞ。長年探し求めていたこの作品を初めて目にした時は、魂が揺さぶられるほどに感動しました。すでに他貴族が購入予約していると画廊商に言われましたが、無理を言って私に売ってもらったのです」


ああ、そんな風に嘘をつかれて値をつり上げられたのか……とラナたちが考えていることには少しも気づかず、伯爵は熱弁を振るい続ける。