懲らしめて差し上げますっ!~じゃじゃ馬王女の下克上日記~

それをラナが説明すると、レベンツキー伯爵がたちまち焦り始め、「それでは、これも、これも、二千万ゼニーもしたこの名画も、全て偽物だと言うのですか!?」と廊下にかけられている贋作を指差している。


まだ子供扱いされたことに腹を立てているオルガが、「間違いなく贋作です。悪徳画廊商に騙されて馬鹿みた……いえ、お気の毒です」と冷たく言い放ち、ラナは目を瞬かせていた。


(偽物に大金を注ぎ込むために、領民を苦しめていたなんて……)

レベンツキー伯爵は大馬鹿者に違いないが、ラナが呆れている理由は、他にもうひとつあった。

伯爵のハの字の髭の右側が、先ほどまでと角度を変えているのだ。

(髭だけは形がビシッと整って立派に見えたのに、もしかして付け髭?それも偽物なのね……)


カイザーもずり落ちそうな片方の髭に気づき、ラナの斜め後ろで吹き出しそうになっており、それをごまかそうとするような咳払いが聞こえてきた。

伯爵だけは髭に構っていられる状況ではなく、「ということは、まさか、アレも……?」と青ざめている。

二千万ゼニーよりもさらに高額な商品を同じ画廊商から買ってしまったのだと推測されたが、信じたくないのか、ぎこちない笑みを浮かべ、「いやいや、それだけはあり得ませんな。ここにあるほとんどが贋作でも、あの絵だけは間違いなく本物だ」と胸を張って独り言を述べていた。