懲らしめて差し上げますっ!~じゃじゃ馬王女の下克上日記~

ちびっ子と馬鹿にした伯爵に、「二十一歳の大人の侍女です」と思いきり顔をしかめてみせたオルガは、その後に足元に向けて「このおっさんムカつくわ……」とボソリと呟いている。


「王都では鑑定家ごっこが流行っているのですかな?」と笑う伯爵が、オルガの頭をよしよしと撫でたので、さすがに気の毒に思ったラナは自分の横にオルガを引き寄せると、無言で伯爵に厳しい視線を向けた。

それでハッとしたように笑うのをやめた伯爵が、「し、失礼しました」と姿勢を正し、王女の気分を害してしまったことを気にして、再びオドオドし始める。

ラナは小さなため息をついてから、真面目な顔をして、オルガの名誉を挽回しようとした。


「あなたは中央美術学会の一等会員だと言うけれど、オルガはさらに上の、特別名誉会員よ。美術品が特別好きなわけではないのに、絶対的な鑑識眼を持っているから頼まれて会員をしているの」


オルガは一度見聞したことは決して忘れない、超人的な記憶力の持ち主である。

その能力は、美術品の真贋を確かめる鑑定にもってこいのものであった。

絵筆の微妙なタッチや色彩の風合い、サインなど、有名作家の特徴を記憶しているため、本物と贋作の見分けがつくのだ。

彫刻も然りである。

王家が美術品を購入する際には、オルガに鑑定を任せるほどに信頼が厚い。