つまり伯爵は、趣味の絵画収集に多額の費用がかかるため、領民たちを苦しめて高額な税を課していたということのようだ。
(この人、本当に愚か者だったのね……)
ラナたちが白い目で見ているというのに、レベンツキー伯爵は陶酔した表情で名画についてペラペラと解説している。
その時、廊下の端までいって何十点もある絵画をひと通り見て戻ってきたオルガが、伯爵の真ん前で足を止めた。
急に目の前で顔を見上げられた伯爵は、絵画の解説をやめて、「お嬢ちゃん、どうしたのかな?」と戸惑うように問いかける。
するとオルガは「私は子供ではありません。姫様の侍女です」とムッとした顔で訂正し、それから「お気の毒ですが」と淡々とした声で指摘する。
「ほとんど偽物です。廊下の奥側に飾られていた『シルバー婦人の湯浴み』と『叱られるウッカリ男』だけは本物でした」
「……は?」と意表を突かれたようにポカンとした伯爵であったが、額に手を当てると、急に笑いだす。
「私は中央美術学会の一等会員ですぞ。私自身も名画の模写を趣味としておりまして、確かな鑑識眼があると自負しております。騙されることはありません。それとも、可愛いちびっ子侍女殿の冗談ですかな?」
(この人、本当に愚か者だったのね……)
ラナたちが白い目で見ているというのに、レベンツキー伯爵は陶酔した表情で名画についてペラペラと解説している。
その時、廊下の端までいって何十点もある絵画をひと通り見て戻ってきたオルガが、伯爵の真ん前で足を止めた。
急に目の前で顔を見上げられた伯爵は、絵画の解説をやめて、「お嬢ちゃん、どうしたのかな?」と戸惑うように問いかける。
するとオルガは「私は子供ではありません。姫様の侍女です」とムッとした顔で訂正し、それから「お気の毒ですが」と淡々とした声で指摘する。
「ほとんど偽物です。廊下の奥側に飾られていた『シルバー婦人の湯浴み』と『叱られるウッカリ男』だけは本物でした」
「……は?」と意表を突かれたようにポカンとした伯爵であったが、額に手を当てると、急に笑いだす。
「私は中央美術学会の一等会員ですぞ。私自身も名画の模写を趣味としておりまして、確かな鑑識眼があると自負しております。騙されることはありません。それとも、可愛いちびっ子侍女殿の冗談ですかな?」


