イワノフの頭には、謀反を企み、戦の資金集めをしていたのではないかという疑いがあるようで、丸眼鏡の奥の賢者の瞳を鋭く光らせている。
「まかさとは思いますがーー」とイワノフが声を低くしたら、伯爵は首をブンブンと横に振って慌て始めた。
「め、滅相もございません!私は国王陛下に忠誠を誓っております。蓄えも微々たるほどしかありません!」とイワノフの懸念を完全否定してから、「実は……」とラナの顔色を窺うようにしてオドオドと打ち明ける。
「集めた資金は趣味にすっかり使い込んでしまいまして……。あの、お見せしたいものがあるのですが、よろしいでしょうか?」
レベンツキー伯爵は、ティータイムを終えた五人を連れて応接室を出ると、屋敷の最上階である三階まで上がった。
そこは廊下の幅がやけに広く取られ、中央には椅子が並べられている。
壁には何十点もの絵画がズラリと飾られて、まるで画廊のようであった。
手前の肖像画の前に立ったラナが「『ユミーノ・カオルディ作、スケサンカクサンの肖像』だわ。これを持っているなんてすごい」と独り言を呟けば、伯爵がパッと顔を輝かせて急に張り切りだす。
「さすが王女殿下、この絵の価値をよくご存知でいらっしゃいます。三年前から我が家が懇意にしている画廊商がおりまして、名画を入手したらオークションを開催する前に、すぐに私に連絡をくれるのです。じつにありがたい。どれもこれも私がかねてより欲しいと思っておりました作品ばかりで……」
「まかさとは思いますがーー」とイワノフが声を低くしたら、伯爵は首をブンブンと横に振って慌て始めた。
「め、滅相もございません!私は国王陛下に忠誠を誓っております。蓄えも微々たるほどしかありません!」とイワノフの懸念を完全否定してから、「実は……」とラナの顔色を窺うようにしてオドオドと打ち明ける。
「集めた資金は趣味にすっかり使い込んでしまいまして……。あの、お見せしたいものがあるのですが、よろしいでしょうか?」
レベンツキー伯爵は、ティータイムを終えた五人を連れて応接室を出ると、屋敷の最上階である三階まで上がった。
そこは廊下の幅がやけに広く取られ、中央には椅子が並べられている。
壁には何十点もの絵画がズラリと飾られて、まるで画廊のようであった。
手前の肖像画の前に立ったラナが「『ユミーノ・カオルディ作、スケサンカクサンの肖像』だわ。これを持っているなんてすごい」と独り言を呟けば、伯爵がパッと顔を輝かせて急に張り切りだす。
「さすが王女殿下、この絵の価値をよくご存知でいらっしゃいます。三年前から我が家が懇意にしている画廊商がおりまして、名画を入手したらオークションを開催する前に、すぐに私に連絡をくれるのです。じつにありがたい。どれもこれも私がかねてより欲しいと思っておりました作品ばかりで……」


