グリゴリーは背中の布袋の中から取り出した大刀を振り回し、同時に斬りかかってきた護衛兵ふたりの剣を粉砕している。
そしてイワノフはというと……どこから取り出したのか、その手に木槌を握って、年長の役人の頭をコンコンと叩き、説教中であった。
「これ、お主。先ほどおなごの頬を打ったじゃろう。身分を履き違えた、なんと情けない男だ。役人は公僕と言ってな、民のために尽くしてこそーー」というイワノフの言葉を、樽の中に潜むオルガが手帳に記録している。
十三対、四プラス記録係の戦いだが、力の差は歴然で、ラナたちはバッタバタと敵を地に伏せていく。
手応えさえなく、あっという間に終了かと思われたが、焦りを顔に浮かべた伯爵が、「なにをしている、加勢はまだか!」と声を荒げれば、メインストリートの奥の、伯爵邸がある方から、新たな護衛兵が集団で押し寄せてきた。
その数、ざっと六十名ほどである。
(急に増えたわね。弱っちいのが束になったって負ける気がしないけど、時間がかかってオヤツの時間になっちゃうわ……)
そう思ったラナは、二階建ての酒屋の瓦屋根に向けて「トカゲ!」と呼びかけた。
すると、黒ずくめの衣装を纏い、仮面で目元を隠したひとりの男が屋根の上に現れた。
細身でしなやかな体躯をしたその男は、クルクルと宙返りをするように飛び降りると、ひとっ飛びにラナの真横まできて、「助太刀致します」とボソボソとした声で話した。
「うん。トカゲ、よろしくね」
そしてイワノフはというと……どこから取り出したのか、その手に木槌を握って、年長の役人の頭をコンコンと叩き、説教中であった。
「これ、お主。先ほどおなごの頬を打ったじゃろう。身分を履き違えた、なんと情けない男だ。役人は公僕と言ってな、民のために尽くしてこそーー」というイワノフの言葉を、樽の中に潜むオルガが手帳に記録している。
十三対、四プラス記録係の戦いだが、力の差は歴然で、ラナたちはバッタバタと敵を地に伏せていく。
手応えさえなく、あっという間に終了かと思われたが、焦りを顔に浮かべた伯爵が、「なにをしている、加勢はまだか!」と声を荒げれば、メインストリートの奥の、伯爵邸がある方から、新たな護衛兵が集団で押し寄せてきた。
その数、ざっと六十名ほどである。
(急に増えたわね。弱っちいのが束になったって負ける気がしないけど、時間がかかってオヤツの時間になっちゃうわ……)
そう思ったラナは、二階建ての酒屋の瓦屋根に向けて「トカゲ!」と呼びかけた。
すると、黒ずくめの衣装を纏い、仮面で目元を隠したひとりの男が屋根の上に現れた。
細身でしなやかな体躯をしたその男は、クルクルと宙返りをするように飛び降りると、ひとっ飛びにラナの真横まできて、「助太刀致します」とボソボソとした声で話した。
「うん。トカゲ、よろしくね」


