懲らしめて差し上げますっ!~じゃじゃ馬王女の下克上日記~

レベンツキー伯爵は馬を歩かせて道の端に避け、安全な場所で高みの見物を決め込んでいた。


十三人の敵に対して、ラナたちは五人……いや、戦える者は四人である。

オルガは見た目からして戦闘に不向きであるため、邪魔にならないようにと、すでに身を隠していた。

どこにいるのかといえば、道沿いの酒屋の前に置かれている、空っぽのワイン樽の中である。

頭に麦藁までのせてカモフラージュし、自分の役目を果たそうと目だけを覗かせ、戦いの様子を正確に手帳に記録していた。

それは、中央政府に提出する報告書を作成するための、重要な仕事であった。


(さあ、暴れるわよー!)

人数的に不利な状況であるというのに、ラナの口元には笑みが浮かび、好戦的な目をしている。

カイザーはマントの下に剣を二本隠し持っていて、その内の短い方を鞘ごと引き抜くと、ラナに向けて投げ渡す。

それを受け取ったラナは、張り切って剣を抜いた。

斬りかかってきた護衛兵の剣を難なく受け止め、「怪我したくなかったら、早めに降参することね!」と碧眼を強気に輝かせ、実に生き生きと楽しんでいた。


カイザーは、いつでも助けに入れる距離で、ラナを気にしながら戦っている。

自身に向けられる数本の剣をいっぺんに相手にしていても、それをほとんど見ていない。

目は常にラナを追い、「右から来るぞ。次は後ろだ」といちいち声をかけるから、「カイザー、うるさい。わかってるから!」とラナに叱られていた。