懲らしめて差し上げますっ!~じゃじゃ馬王女の下克上日記~

まだラナの素性に気づかない伯爵は、「さあ、謝りたまえ」と偉そうに胸を張って土下座を強要してくる。

ラナは馬上の伯爵をキッと睨みつけると、両手を腰に当て、「バッカじゃないの?」と鼻で笑ってやった。


「あんたみたいな能無し悪徳貴族に、頭を下げるわけないじゃない。私服を肥やすために領民たちをいじめるのはやめなさい。言うことを聞かなければ、私が成敗してやるわよ?」


ラナの言葉にカイザーたちは頷いているが、遠巻きにしている町人も、役人や伯爵の狩りに同行していた者たちも、皆、驚きの表情を浮かべていた。

この領地内で、伯爵に反抗する者など、今まで見たことがなかったためであろう。


レベンツキー伯爵は目を見開いてから、顔を真っ赤に染めて怒り出す。

「我輩に向けて、そのような物言いをするとはなんたる奴だ。無礼千万である」とラナを厳しく非難した後に、「容赦する必要はない。抵抗するなら斬り捨てて構わん。こやつらを、ひっ捕らえよ!」と大声で家来たちに指示を出した。


護衛の者たちが次々と馬を降りて、腰の剣を引き抜く。

食堂に踏み込んだ役人たちも一緒に剣を手にしており、敵の戦闘員の総数は十三人である。