懲らしめて差し上げますっ!~じゃじゃ馬王女の下克上日記~

いち早く彼らに追いつき行く手を塞ぐように立ったのは、カイザーとグリゴリーである。

斜に構えて「待て!」とかっこよく役人たちの足を止めたカイザーに、二秒遅れて追いついたラナが、「その役、私がやりたかったのに!」と頬を膨らませた。

それから役人たちに向き直ったラナは、両手を腰に当てて、文句をぶつける。


「あなたたち、税の徴収を待ってあげなさい。大体ね、高すぎるのよ。客が滅多に来ない食堂が、三十万ゼニーも払えるわけないでしょう?減額しなさい!」


「なんだお前らは?」と若い役人ふたりがラナたちを睨みつけ、店主を放すと、それぞれの腰の剣に手をかけた。

それに反応したカイザーとグリゴリーが、ラナを守るべく素早く前に出て、役人たちと対峙する。


周囲の建物から町人がちらほらと出てきて、心配そうな目で遠巻きに注目している。

一触即発の雰囲気に、町の女性が息をのんだら……石畳の道に馬の蹄の音が響いた。

それはどんどんこちらに近づいてきて、役人の後ろで数頭の馬が足を止めた。

白馬に跨っている身なりのよい男が、「何事だ!?」と厳しい声色で役人に問いかける。


その男の顔を、ラナは知っていた。

「レベンツキー伯爵ね……」と、忌々しげに呟く。