懲らしめて差し上げますっ!~じゃじゃ馬王女の下克上日記~

真っ赤に色づく頬が痛そうである。


それを見ていたラナは、憤怒の表情で立ち上がると、「我慢できない。ちょっと行ってくる。みんなはここで食べていて」と指示をした。

しかし他の四人も、スプーンやフォークを置いて、すぐに立ち上がった。


「アホか。お前こそ、ここで大人しく飯食ってろ。俺が止めてくる」と、役人たちが出ていった戸口を睨みつけたのはカイザーだ。

「いえ、ここは自分が。十秒で店主殿を取り戻して参ります」と右手の指をバキバキ鳴らしたのはグリゴリーで、オルガは「なにが起きたのかを、この目でしっかり記憶し、記録します」と小柄な体で張り切った。

イワノフは、「では全員で行くとしましょうかの。わしも、あやつらに説教したくて我慢ならん」と、賢者の瞳を鋭くする。


一斉に駆け出した五人が外へと飛び出すと、十メートルほど先のメインストリートの真ん中を、役人たちが歩いていた。

店主は足を踏ん張るようにして抵抗しているが、両脇を固める頑強そうな役人たちに引きずられては、靴の踵をすり減らすだけで少しの効果もない。

その後ろを悠々と歩いているのが年長の役人で、赤ん坊をおぶった妻は、泣いて懇願しながら追いかけていた。