懲らしめて差し上げますっ!~じゃじゃ馬王女の下克上日記~

左手を腰に当てた年長の役人は、右手を店主に向けて差し出し、金子を要求している。

店主が震える手で紙幣を渡せば、役人はその枚数を数えてから店主をジロリと睨みつけた。


「五万ゼニーしかないではないか。ひと月分にも満たないぞ」

「も、申し訳ございません。今はそれだけしかお支払いできないんです。お許しください」


コック帽を脱いで握りしめ、何度も頭を下げる店主に、役人は柔らかい声色を作って「わかった、許そう」と口にする。

その直後に急に声に鋭さを取り戻し、「などと言うはずがないだろう。愚か者め!」と怒鳴りつけた。


「レベンツキー伯爵から、悪質な滞納者はひっ捕らえよという命令が下された。お前を拘束し、処罰する」


「やれ!」と命じられた若い役人ふたりが、素早く動いてたちまち店主の両腕を捕らえた。

そのまま店外へ連れ出そうとしており、慌てた妻が店主の腰にしがみついて止めようとしている。

「お待ちください!どうかお許しください!」と彼女が悲痛な声を上げたら、それまで眠っていた赤ん坊が目を覚まし、大きな声で泣き出した。

すると年長の役人が妻の腕を掴んで店主から引き離し、その頬を平手でピシャリと打った。