懲らしめて差し上げますっ!~じゃじゃ馬王女の下克上日記~

ラナも、骨付きソーセージを握りしめる手が震えるほどに怒りを覚えていた。

「許せないわ!」と思わず鼻息を荒くしたら、テーブルを挟んだ向かいの席のオルガが真顔で立ち上がり、ハンカチを持った手をラナに伸ばした。


「お怒りになられるのは無理もありませんけど、口の横にトマトソースがついています。それと、剣のようにソーセージを振りかぶられては困りますので、皿に置いてください」


侍女と王女のやり取りにカイザーはプッと吹き出して、その後に「どうする?」とニヤリとしてラナに問いかけた。


「決まってるでしょ。レベンツキー伯爵を成敗してやるのよ!」


怒りを抑えられずに大声で宣言したラナは、皿に置いたばかりの骨付きソーセージを掴むと天井に掲げた。

深く頷き、「なぜ私腹を肥やそうとしたのかも追及せねばなりませんな」と、やるべきことを付け足したのはイワノフである。

穏健派と言われ、王家にとって無害とみなされてきた貴族が、もしや謀反を企み、戦の資金を蓄えているのかもしれぬと、その目は疑っているようだ。


その時……グリゴリーが緊張を走らせた声で、「お静かに、誰か来たようです」と戸口を睨んだ。

食堂なのだから、客が来たのだろうと思ってラナは斜め後ろに振り向いたが、どうやら違うようである。