懲らしめて差し上げますっ!~じゃじゃ馬王女の下克上日記~

『三年くらい前から急に値段が高くなったんだ。伯爵様がお金をたくさん持ってちゃうから、みんな困ってる。でも文句を言ったら駄目なんだよ。お役人に聞かれたら、捕まって牢に入れられちゃう。だから僕が喋ったって内緒だよ?』


少年の言葉を再現したイワノフは、一見して人の良さそうな笑顔を浮かべているが、その目は静かな怒りに満ちていた。

シミの目立つ節くれだったイワノフの右手は、スープ用の木製スプーンを握っているけれど、ラナたち他の四人は、彼が裁判で使用する木槌を握っているかのような錯覚に陥る。

口一杯にラム肉を詰め込んだラナが、飲み込むのを忘れてイワノフを見つめていると、賢者はしわがれた声を低くして言った。


「わしが睨んだ通りじゃな。レベンツキー伯爵は政府を欺き、領民たちから高額な税金を徴収しておる。間違いない」


それは、近隣諸侯が異変に気づいて政府に情報をもたらした三年ほど前から始まったと、イワノフは断言した。

そのせいで村のきこりたちは、過剰に山の木々を伐採して売らなければ生活が立ち行かなくなり、町の店々も収入を増やすために値を上げざるを得なくなった。