四角い顔で薄茶の髪を短く刈りそろえた彼は、カイザーの従順な部下である。

グリゴリーとカイザーはコンビを組んで任務に当たることが多いため、ラナが供として連れて行くことを決めた。

カイザーが動きやすいだろう、と思っての人選だ。

まだ騎士見習いといった立場のグリゴリーだが、その腕前はなかなかのものである。

身長二百十センチ、体重百十キロの大柄な体格は頼もしく、力持ちで、荷物持ちを一手に引き受けてくれるところもありがたい。

大きな布袋を背負ったグリゴリーが、感心したように話し出す。


「それにしても姫様は演技がお上手です。早くも平民の言葉を使いこなしていらっしゃる。自分は驚くばかりであります」


それは前を歩くラナに向けた会話ではなく、隣にいる丸眼鏡をかけた初老の男性に対するもののようだ。

ホッホと笑って「ほんとじゃのう。どこをどう見ても、ただの町娘じゃの。これなら任務も上手くいきそうじゃ」と答えたのは、同じく旅の同行者に選ばれたイワノフ。

彼は、国王の相談役や王立大審院長を長年務めている賢者である。