上等な騎士服に比べれば見劣りする衣装のカイザーだが、たとえボロを纏っていたとしても、彼の麗しさは少しも損なわれない。

小麦畑の中には、農作業中の村娘が数人いた。

彼女たちは手を止め、熱を帯びた視線をカイザーに注いでいるようであった。


お弁当を食べる場所について話しかけたラナに、カイザーは呆れ顔で「浮かれてんじゃねーよ。もっと気を引きしめろ」と注意する。

するとラナはムッとして、「浮かれてないよ。重要な任務であることはもちろんわかってる」と口を尖らせて反論した。

けれどもすぐにご機嫌な声色を取り戻し、「仕事はきっちりやるつもりだけど、目的地に着くまでは楽しんだっていいじゃない」と明るく笑って言った。


「ほら、カイザーも笑ってよ。一緒に歌でも歌おうか?」

「嫌だ」

「ノリの悪い奴だね。いいよ、ひとりで歌うから。途中でハモりたいと言っても、ハモらせてあげないんだからね」

「アホか」


口喧嘩を楽しむふたりの後ろには、この旅の同行者が三人いる。

ひとりはグリゴリーという名の、十八歳の従騎士だ。