ドレスより遥かに動きやすく、足取り軽やかなラナは、隣を歩くカイザーに「ねぇ」と上機嫌で話しかけた。


「もうすぐお昼だよね。お弁当、どこで食べよっか。どうせなら泉のほとりや丘の上、景色がいい所がいいな!」


満面の笑みのラナは、今のところハイキング気分である。

もう大人なのだからと諦めて、王女らしく過ごしていた日々の中で、突然、自由を手に入れたのだ。

それも父の命によってであり、後ろめたさを一切感じずにすむから、彼女は嬉しくて仕方ない。


護衛としてラナの旅に同行しているカイザーも、騎士服ではなく平民の装いをしている。

上部に折り返しのついたロングブーツを履き、木綿の黒いズボンとシンプルな貫頭衣。

腰は革のベルトで締め、鶯色のマントを羽織っていた。

剣はラナのものを含めた二本を、マントの下に隠している。

立派な剣を見せびらかせて歩けば、ただの旅人ではないとバレてしまうからであった。