国王は威厳に満ちた重みのある声で、娘に命じる。


「ラナスタシアよ。保守派の貴族たちが、お前に拍手を送らざるを得ないほどの力を、示して見せよ。それができたなら、王位をお前に譲ろう」


ラナはゴクリと唾を飲み込んでいた。

(これは、かなりの難題ね……)

まさかそれ程の要求をされるとは思っていなかったため、ラナの頬は緊張に強張っていた。

けれども、尻込みしているわけではない。

すぐに好奇心と冒険心がムクムクと膨らんで、緊張から喜びへと気持ちが変化し、彼女の碧眼は生き生きと輝き始めた。


(なんて面白そうなミッションなの。早速、連れて行く者の人選をして、旅支度をしなくちゃ。それが終わればすぐに出発よ!)


すっくと立ち上がったラナは、興奮のあまりにドアに向けて駆け出した。


「お父様、ありがとうございます! 貴族領の問題を、楽しんで解決して参りますわ!」


満面の笑みを浮かべた彼女は、父に退室の挨拶をするのも忘れて、勢いよくドアを開け放った。

「コラ、待たんか! 遊び半分で挑まれては危険がーー」という国王の注意は、廊下に飛び出した彼女の耳に届かなかった。