「はい。どのようなことでしょう? 学力試験でしょうか?」

「いや、実践的な能力を問いたい。それはーー」


父が出した課題は、こうだ。

この国は広い領土を有するが、百ほどに分割されていて、各貴族がそれぞれの領地を管理している。

うまく統治している貴族もいれば、内乱が絶えないところや、麻薬密売など悪い噂が流れてくる町もある。


今、国王が問題視し、頭を悩ませている貴族領は三カ所あった。

視察団を向かわせても、いい所しか見せず、巧妙に問題を隠すため、実態を掴めずにいるそうだ。

国王はラナに、それらの貴族領にお忍びで出向いて実態を調査し、できれば問題を解決してこいとの課題を与えた。


そんなことを言い出したのには、きちんとした理由があるらしい。

女王の前例はなく、王室典範を変えようとすれば、特に保守派貴族の強固な反対に遭うのが目に見えている。

女王即位の法案を会議で可決させるには、反対派に回ると予想される貴族たちに対して念入りな根回しが必要で、それには時間がかかるだろう。

とてもじゃないが、一年後の王位継承式までに法律を改正することはできないと国王は考えていた。

だからこそ、無茶なミッションを娘に突きつけたのだ。

問題解決能力が極めて高いことを貴族たちに知らしめれば、女王即位に反対する者はかなり減るに違いないからだ。