「それでは、王室典範を変えてください。お父様は国王ですもの、おできにならないはずはありませんわ」


父がその気になるよう、敢えて軽く言ったのだが、国王は再び唸り声を漏らしてから、目を閉じて黙り込んでしまった。

いくら国王といえども、独裁国家ではないので、簡単に法律を変えることはできない。

会議にかけ、三分の二以上の賛成を得なければならないのだ。

おそらく国王は、反対する者がどれくらいいるだろうかと考えているのだろう。

険しく顔をしかめているところを見れば、その数が少なくないことが予想される。


ラナは父が結論を出すまで、邪魔せずに黙っていた。

父が話を聞くと言った十五分はとっくに過ぎて、柱時計は入室してから一時間ほど先に時間を進めていた。

数分の後に国王はやっと目を開け、重みのある渋い声を娘に聞かせた。


「よかろう。女王即位のために、法律改正の議題を会議にかける」


心の中で『やった!』と喜びかけたラナであったが、そうすんなりと願いは叶わぬようである。

「その前に、お前を試したい」と父が真顔で言ったのだ。