するとその発言に対して、また別の貴族が異を唱える。

「他国が女王制をとっているからといって、それに習う必要はない。我が国の伝統を守るべきだ!」


扇状に広がるたくさんの席には、子爵以上で家督を持つ貴族男性が、テーブルを前にして座っている。

その人数は、百二名。

秋の終わりから春までの農閑期は、貴族たちが家族とともに王都にやってきて、交流に勤しむ。

その間は議会も、いつもの有力貴族だけではなく、末端貴族も参加可能であった。


国中の貴族が集まっての議会は、過去、類を見ないほどに紛糾している。

女王即位の法改正について、十日連続で話し合っているというのに、賛成と反対が半々といったところで、平行線の議論のぶつけ合いは過熱するばかりだ。


「性別より、適性で王位継承者を選ぶべきです!」

「貴殿は、王太子殿下が無能だと言われるのか? 少なくとも女よりは崇高な理念をお持ちのはず。頭の中がお花畑の女には、とてもじゃないが国政を任せられん!」

「あなたの方こそ、王女殿下を愚弄しているじゃありませんか。女性蔑視は、ご自分の家の中だけにしてください」