懲らしめて差し上げますっ!~じゃじゃ馬王女の下克上日記~

その夜。

東西に尖塔がそびえる荘厳な大邸宅の二階に、ラナの寝室があった。

南側の、床にまで長く垂れている水色のカーテンが、ぼんやりと明るい。

カーテンの向こうは両開きのガラス戸になっていて、バルコニーに繋がっている。

今宵は満月のため、外が明るく見えるのだろう。


広々とした部屋の中央よりやや奥に、天蓋付きの豪華なベッドが置かれていた。

白い絹のネグリジェ姿のラナは、二十三時頃に部屋の明かりを消してベッドに横になったのだが、いつまで経っても眠りは訪れず、カーテンを見ながら考え事をしている。

彼女の頭を悩ませているのは、この国の未来であった。


(お兄様のアホさに、呆れているばかりではいけない時期にきているのよね……)


今は六月で、来年の七月に王位継承式が予定されている。

兄が王座につけば、国政は滞るどころか、悪政によって民が苦しむ事態になるのではないだろうか。

我がミトロニア王家に忠誠を誓っている諸侯たちの中に、王家に国を任せてはおけないと、謀反を企む者が現れるかもしれない。

戦闘が起きれば、長年守られてきた平和は乱され、多くの血が流れてしまう。

ハーレム宮に反対しているだけの、生易しい事態ではなくなるのだ。